緑川 氏にインタビュー
緑川 氏のキャリアとバックグラウンドについて
大学卒業後、カメラマンとしてのキャリアを歩むために、アマナグループに入社。そこから、発注側にあたる広告代理店の業務に興味を持ち、広告代理店のベトナムの支部で勤務を開始。帰国後も国内の広告代理店にてグローバルマーケティングを経験しました。その後は、自社データを用いたメーカー側でのマーケティングにチャレンジするために株式会社ナイキジャパンに入社し、パフォーマンスマーケティングを担当。SNKRS(スニーカーズ)の立ち上げ/Growthにも携わりました。現在は、AI英会話「スピークバディ」のマーケティング部門の責任者をしています。
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株式会社スピークバディについて
株式会社スピークバディは、「真の言語習得を実現し、人生の可能性と選択肢を広げる」ことをミッションに掲げ、AI英会話「スピークバディ」の企画・開発、及びオンライン英語コーチング、「スピークバディ パーソナルコーチング」の企画・運営、を行っています。AI英会話「スピークバディ」は、音声認識、会話AI、デジタル音声等の技術を活用した英会話レッスンを行うことができるストレスフリーなAI英会話アプリで、累計160万ダウンロード(2022年7月現在)を達成しています。
AI英会話アプリスピークバディについて
音声認識、会話AI、デジタル音声等の技術を活用した英会話レッスンを行うことができるストレスフリーなAI英会話アプリ。2022年7月現在、累計160万ダウンロードを突破。2021年、AI英会話アプリとして初のグッドデザイン賞受賞。従来の人との対話ではなく、感情豊かなAIキャラクターと対話をしながら発音やフレーズ、単語、イディオムなどを学ぶことが出来る新しい英会話学習サービスです。「第二言語習得理論」に基づいた学習モードで英会話の習得をサポートするほか、機械学習や自然言語処理、ディープラーニングによって、発音を採点することができます。
1ヶ月プラン ¥3,300
6ヶ月プラン ¥17,800(¥2,967/月)
12ヶ月プラン ¥23,800(¥1,983/月)
スピークバディでのマーケティングについて、どのように業務を行われているかお聞かせください。
マーケティングの施策を決める際には、まず課題を抽出することから始まります。この課題を解いたときのインパクトはどの位になるのか、緊急度はどれくらいなのかをコスト、フィージビリティ、インパクトの3つの軸で捉えて、それを今解くべきなのかどうかを考えながら課題を抽出します。その上で、課題を解決するための戦略を決め、戦略を決めたら細かな施策を決めて、そこにターゲットや、チャネル、コミュニケーションが紐付いていくような形でブレイクダウンをしています。
その過程で、コストを強く意識しながら、かなり経営に近い目線でマーケティングを行っています。これは今までになかった経験なので、スタートアップで成長できたポイントの1つだと感じています。
スピークバディで担当しているマーケティングにおいて、現在のフェーズやチャレンジしていることをお聞かせください。
現在は、PRに力を入れ始めています。AI英会話「スピークバディ」はデジタルを中心としたマーケティングで、160万ダウンロードまで到達しました。英会話の学習者は1,000万人ほどいると言われており、その中で160万ダウンロードまで到達すると、新規ユーザーの獲得効率が少しずつ鈍化してくる頃だと感じています。
そこを突破していく施策を求められる中で、スピークバディのブランドや企業としての方針の見せ方、創業者である代表の想いをいかに共感してもらえる形で発信していくか、といったことが重要になります。サービスの認知を広げていく上で、共感力を伴う形でメッセージが伝播していかないと、なかなかサービスとして選ばれないのではないかと思います。現在は、マーケティングだけでなくPRも管轄しており、背景にあるストーリーを丁寧に伝えていくことの重要性を感じています。スタートアップは特にPRに注力しないといけないと、気付けたこともスタートアップに来て成長できたポイントだと思います。
大企業とスタートアップのマーケティングの違い、組織の違いについてお聞かせください。
スタートアップは、大企業と比べて課題の解像度が高い印象があります。アクションする上で時間と費用が明らかに有限な状態であるため、解くべきイシューのインパクト、フィージビリティ、コストの3点を考慮しながら、緊急度が高いことから進めていかないと、会社の存続事態に関わるようなヒリヒリ感がいつもあります。
また、スタートアップに入社する前は、大企業は縦割りで役割が分かれている一方で、スタートアップは何でもやらなければいけないようなカオスな状態だとイメージしていました。しかし、大企業とスタートアップを両方経験した今だからこそ思うのは、必ずしも大企業が縦割りというわけではなく、当事者の頭の中が縦割りになっているだけだということです。スタートアップでも大企業でも部署をまたいで考えられる人でないと、あまり活躍はできないのではないかと思います。
その意味で、大企業とスタートアップの組織的な違いはあまり感じていません。大企業もスタートアップも誰もが率先してアイデアを出せるように、心理的安全性を高めて、どのようなアイデアであっても歓迎する土壌を作ることが大事だと思います。それにより、「マーケティングだけではなく、アプリのグロースチームも巻き込んだ企画をやりましょう」「インストール目標だけではなく、売上に直結するようなアクションが大事だ」という、部署を超えた観点を誰もが持てるようになります。
これまでのキャリアにおいて、ベトナムで勤務を開始された際は英語が話せなかったと伺いました。グローバル企業であるNIKEでも海外のメンバーとのコミュニケーションも必要になったかと思います。緑川様自身、英語力をどのように向上されたのかお聞かせください。
ベトナムに行った時は、1日3時間、英単語帳に書かれている例文をひたすら暗記していました。半年から1年くらい続けて丸暗記できるようになり、例文の単語を少しずつ変化させることで、英語が話せるようになりました。NIKEに入社した際も、英語力は高いとは言えませんでしたが、週に1回、50〜60人の前でのプレゼンや、週次のビジネスレビューを英語で行うことで鍛えられました。3年間、実践的な環境に身を置き続けることで、英語力が伸びていきました。
この経験からスピークバディのサービスにも共感が持てました。例文を1回読んだくらいではフレーズは身に付きません。通学型やオンライン英会話の場合は、同じ例文を繰り返す機会がないため、フレーズを身につけるのが難しいのですが、スピークバディではAIが認識するまで、繰り返し練習できます。学べるキーフレーズもネイティブが聞いても自然なフレーズなので、その点もおすすめです。
日本人の英語学習をどのように捉えられていますか。また、スピークバディがその課題に対してどのように取り組まれているかについてお聞かせください。
日本は高齢化が進み、社会的競争力が落ちていく中で、外資に頼らざるを得ない環境になると予想されます。その中で、日本人が英語の基礎力を上げないといけないという危機感を強く感じています。学校教育も、高校卒業時に英語のアウトプットをCEFR-Jのある基準まで伸ばそうという指導要領に変更されており、今日本の英語学習はターニングポイントにあると思っています。
日本人の英語学習の課題として、アウトプットが圧倒的に足りないという点があると思います。日本人は文法や単語の知識はあり、TOEICもある程度高得点が取れる人は多いですが、自然な英語を話せる人が少ないのが現状だと思います。そのため、心理的なハードルが低い状態で、何度も口に出し続ける練習ができるスピークバディのようなサービスの提供が重要だと考えています。
ご自身のキャリアを積み上げてこられた中で意識されてきたことはありますか。
自分の興味がある領域の少し上から俯瞰で見て、自分がその市場の中でどういう競争力を持っているのかは常に考えています。例えば、デジタルマーケティングであれば、いかにPDCAを高速に回すかが重視される傾向にあるかと思います。一方で、少し上から俯瞰をしてみると、PDCAを重視するあまり、顧客視点がおざなりになる可能性もあります。
このように、自分が今取り組んでいる領域から一歩引いた視点で、デジタルマーケティングのPDCAをひたすら回している自分がどういう見え方になるのかを考えるようにしています。
ご自身のキャリアを踏まえて、マーケターとしてのキャリアを歩み始めたばかりの方、これからマーケター職を選ぶ方へメッセージをお願いします。
マーケティングの分野は流れが早く、手法もどんどん新しいものが出てきて、カバー範囲も非常に広いので学び続けることが大事だと常に心掛けています。終わりなき旅みたいなことを覚悟しながらやっていく必要があると感じています。
マーケティングの領域は広いので、極められることはないと思いますが、他の人よりこの分野では詳しくなりたいという感覚を大事にしてキャリアを歩むと、少し上から俯瞰した視点で物事が見えるようになると思います。私自身、その感覚を大事にしてキャリアを歩んできました。