兪 捷克 氏

M&E Time Entertainment Co.,Ltd.


Jackie氏にインタビュー

Jackie氏のキャリアとバックグラウンドについて

Jackie氏は約15年日本のIT業界に従事しています。日本と中国向けのIT設備のソリューション提案営業に10年以上従事した後に独立。日本のマーチャントに対して中華系決済業者のワンストップソリューションを提供する会社を設立。その後、TikTokの立ち上げメンバーとしてByteDanceに参画し、TikTokのマーケティング立ち上げを行い、組織体制作りやブランド戦略の統括などを4年間行いました。そして、M&E Time Entertainmentに日本市場のGMとして入社しました。現在、同社では、経営全般に加え、アプリの運営や事業開発、マーケティングといった各領域の効率化・最適化や、ローカライズの精度向上などに従事しています。

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M&E Time Entertainmentについて

M&E Time Entertainmentは2016年7月に設立され、北京と東京の2拠点でビジネスを行なっています。2016年9月に、ライブ配信コミュニケーションアプリであるDokiDoki Liveをリリースした後、2018年9月にはオンラインカラオケサービスであるPokekaraをローンチしました。現在は、DokiDoki LiveとPokekaraの2サービスを日本で展開しています。

カラオケアプリ「Pokekara」の概要と最近のアップデートや、注力しているポイントをお聞かせください。

Pokekaraに関しては2022年に、大きなプロダクトのアップデートが2つありました。1つ目は3月にリリースされたライブ機能です。これまでもカラオケを歌っている動画を撮影できる機能は備えていましたが、リアルタイムのコミュニケーションに関しては音声チャットルーム機能のみでした。最近2年間で日本市場でもライブプラットフォームが認知されて受け入れられるようになってきたので、そこはPokekaraでも注力していきたいポイントです。ライブ機能により、本当のライブ感覚で歌を歌ったり、それぞれのオーディエンスと話したりできるようになりました。

2つ目に関してはコミュニティ機能です。単純なカラオケツールだけではなく、プラットフォーム上で同じテーマ・興味関心を持っているユーザーと交流できる機能を強化していきたいと考えています。テスト的に追加していたポケコミュニケーションという機能を2022年5月にアップデートする予定です。ユーザーが掲示板のような感覚でテキストでお喋りしたり、1つのテーマで意見交換したりする非常に重要な機能となっています。

また、今後はモバイルだけではなく、マルチプラットフォーム上でカラオケやコミュニティを楽しんでいただけるシステムも計画しています。

Pokekaraはこの数年で急成長したかと思います。急成長の背景、要因はどのように分析されていますか。

日本に類似サービスがなかったことが一番の勝因ではないかと考えています。ライブ配信アプリ「DokiDoki Live」を2年間ほど日本で運営する中で、新たなビジネスチャンスがないか、ずっとリサーチをしていました。
その中で、日本のカラオケの店舗数、カラオケ人口が、おそらくグローバルでもトップに入る規模だということがわかりました。ただ、意外にもオンラインのカラオケサービスにコミュニティ機能を付け加えたようなものはないということがわかりました。そこで、日本市場になかったサービスを提供できたというのが、我々が考えている一番の勝因かと思います。

もう1つ重要なのは、行動力だと思います。このビジネスは、アプリに伴奏(曲数)をどれだけ多く持てるかがプロダクトの価値です。そういったところで、Pokekaraでは初期投資としてカラオケ伴奏をひたすら増やしていくということを行いました。
他の企業ではなかなか真似できないようなスピードで伴奏を増やしていくことができたのも1つの成功要因かと思っています。
もちろん、版権管理の協会組織さまと包括契約を短期間で締結できたことも、重要だったと思っています。日本は特に版権を重視する傾向があるかと思いますので、日本の商習慣に沿いつつ、慎重に進めたことも良かったと思います。

Pokekaraでは、カラオケを歌って投稿するユーザーと視聴するユーザーのバランスが重要だと思いますが、適正なユーザー比率をどのように保っているのでしょうか?

一般的に1対9の法則ということがよく言われます。つまり、コンテンツを提供するユーザーの割合は全体の1割かそれ以下で、コンテンツを消費するユーザーがおよそ9割ということです。
この消費する側の9割のユーザーを、コンテンツを提供するユーザーに転換させる方法を考えなければなりません。

弊社ではもともと、DokiDoki Liveというライブプラットフォームがあるので、本来であればローンチ当初にPokekaraにもライブ機能を実装することもできました。ただ、最初から「ライブでカラオケしましょう」「コミュニティを作りましょう」とは展開せずに、まずは音声だけのサービスにすることでユーザーのアプリに対する理解度を高めることを重視しました。
リリース後1年目でPokeroomという音声チャットルームをローンチして、まず投稿のみのところから、投稿だけでなくリアルタイムで音声だけで交流しましょうという転換を図りました。そして、Pokeroomに慣れてきたユーザーが一定の割合に達したタイミングで、もう一段ハードルを高めて、ライブ配信を促すということを行なっています。慎重に時間をかけてユーザーの習慣を育てていく、変えていくような運営に取り組んでいます。

中国発で日本市場をまず最初に見据えてビジネス展開をされているのはユニークかと思いますが、M&E Time Entertainmentのユニークなカルチャーがあれば教えてください。

他のスタートアップ企業も同様の傾向はあると思いますが、マーケットには非常に敏感です。中国発で日本のみでビジネスを展開している企業は特殊かもしれませんが、これはマーケット分析に基づいた戦略の結果でもあります。カラオケは日本発祥で世界に広がったものなので、日本で成功すればそこからまた横展開で他の国で成功できるのではという考えもあり、最初から日本市場をターゲットにしました。

また、社内のカルチャーとして、さまざまなチームが仮説を活発に出すことが挙げられます。その仮説に基づいてテストしてみることが頻繁にあります。日本のアプリサービスでABテストに懸念を持たれている企業もあるかと思います。
ユーザーにABテストを実施するというのは影響がプラスなのかマイナスなのかまだ読めていないので、リスクがあると考える企業も多いと思います。
ただ、中国含め外資系の企業では、積極的にABテストをしていて、ユーザーのカバー率を50%ぐらいでテストを実施するケースも頻繁にあります。そこでマイナスの影響が出れば、改善や追加のテストを実施します。プラスの影響が出てきた場合には、さらにそれを深堀って機能強化していくという形で、どんどん成長を図っていくというのが社内のカルチャーになっているかと思います。失敗を恐れずに、基本的にはチャレンジ、テストをどんどん促進していくような社風はあるかと思います。

中国の企業はスピードが速く、ブルーオーシャンを見つけることがすごく上手な印象があります。日本と中国の企業でそれぞれの強みや違いはどのように考えているかお聞かせください。

中国の企業はブルーオーシャンを見つけて、新しいサービスを作っていくのが非常に上手いとおもいます。どんどんアイデアを考えて、今までにないサービスを作っていくというスタートアップに適した環境に中国はなっているかと思います。ただ、スピードを重視しすぎた結果、運営やブランド作りが疎かになったり、商習慣や権利周りでの問題がおこったりといったところで、大きな規模にまで成長できなかったというのは、過去の失敗例としては多かったかなと思います。

日本の企業は中国の企業と逆な部分があり、事前にマーケティング調査をしっかりと実施したうえで事前に戦略を立てていて、権利周りもしっかりと処理をしてから、サービスをローンチしていく傾向があるかと思います。

中国企業は、内製でアプリマーケティングを進めている企業さんが多いですが、貴社ではどのような体制でアプリマーケティングを行っていますか?

中国のアプリマーケティングに関しては内製で大量にクリエイティブをつくる傾向が強いです。代理店の方々との協業ではどうしてもクリエイティブの量や制作スピードに限界があります。弊社では400〜500程度の素材を毎月すべて内製で作っています。

まず仮説を立てて、いくつかのパターンを決めます。その中で10や20の素材を作り、さまざまなチャネルでテストを実施していき、その中でパフォーマンスの良い素材をさらに改善していったり、あるいはそのテーマを増やしたりしていきます。そして、効率のよいテーマをピックアップしてき、そのテーマに対してまた追加投資してよりクオリティの高い素材を作っていくような流れです。日本の企業ではそこまで大量に素材を作って、あらゆるチャネルでテストマーケティングを実施していくことは、あまり多くないと感じています。

海外進出で苦戦されている日本の企業も多いと思いますが、Jackie様のご経験も踏まえてアドバイスをお聞かせください。

現地メンバーを信用することが大切です。海外展開にあたって、日本本社の経営層から現地のメンバーへの指示のみを行うマネジメントをしていても、ビジネスがあまり上手くいかない場合が多いと思います。特にIT業界に関しては1か月どころか1週間などで状況が変わったりすることもあるので、現地をあまり把握できていない日本本社の経営層たちの判断待ちで進めた結果、支障が出たり、最終的には失敗に繋がったりするというのをこれまでも見てきました。

郷に入っては郷に従え、という形だと思いますが、その国の商習慣を理解した現地メンバーに任せて、現地メンバーの意見を尊重した上でビジネスを進めていくと、海外でも成功する企業が増えてくるのではないのかと思います。

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