by 目黒 悠 氏 | 10月 19, 2021
広告マネタイズでゲーム業界をけん引するオーテのマーケターに学ぶ、収益性を高めるアプリマーケティングの3つのポイント
目黒 悠氏のキャリアとバックグラウンドについて
目黒 悠氏は、「パズルde懸賞」シリーズを運営するオーテ株式会社でマネタイズとカスタマーサティスファクションの責任者を務めています。 株式会社アイモバイルにて、ウェブ・アプリのメディアコンサルティング営業を経験したのち、2019年子会社化された後にオーテへ出向しました。 オーテでは、広告出稿、ASO、マネタイズ領域といった、集客から収益化までのマーケティング業務全般を経験したのち、現在はマネタイズとカスタマーサクセスの責任者として、アプリのマネタイズ最大化ならびに、ユーザー満足度の向上をミッションに据え、アプリの改善やアプリ内施策の実施にも取り組んでいます。
目黒氏のインタビュー記事については、こちらをご覧ください。
オーテ社について
オーテ社は、パズルをプレイして得たポイントをもとに懸賞に応募できる、パズルゲームアプリ「パズルde懸賞」シリーズを提供しており、「ジグソーde懸賞」や「ナンプレde懸賞」をはじめ、7シリーズ 計13タイトルのアプリを中心に運営しています。
累計1000万DLを誇るシリーズアプリを展開する同社は、App Annie 社が発表した「Top Publisher Awards 2021」における【日本でブレイクしたゲームパブリッシャー (ダウンロード数)】部門にて、2位にランクインするなど、国内ゲームパブリッシャーとしての存在感を強めています。 直近では、国内で培ったパズルゲーム開発のノウハウをもとに、海外向けにナンプレパズルアプリをリリースするなど、新たな市場における新規ユーザーの獲得にも注力しています。
1.獲得から収益化までをシームレスに可視化する構造を作る
広告収益モデルのアプリが継続的な成長を目指すためには、広告収益、すなわちマネタイズ側の売上の増加を図りつつ、アドネットワーク広告出稿・ASAやASOをはじめとした、新規ユーザーの獲得に向けたマーケティング施策を最大化していくことが重要になります。
オーテでは、アイモバイルによる子会社後、まずKPIの見直し・設計から取組みました。 具体的には、オーテ全体の売上から、定量的、定性的な要素も含めた上で、セクションごとにKPIを細分化したシートを設計し、各メンバーの目標の可視化ならびに、認識の共有を図りました。
それに併せて、各数値の計測を効率化すべく、RPAを用いて、デイリーで見るべきデータはもちろん、欲しいデータがいつでも取得できるような仕組みを構築しました。 マネタイズ側の強化においては、まず、メディエーションを導入した上でアドネットワークを10社程度に増やし、CPMの最大化を図りました。
そして、先述のRPAで取得して可視化された許容CPIをもとに、出稿ボリュームを最大化し、継続的にインストール数の増加を図った結果、約1年半で、売上が5.5倍となる大きな成果につなげることができました。
2.ユーザー体験を維持しつつ収益化を目指す
広告による収益拡大のためには、インプレッションを増加させる、すなわちアプリ内の広告枠数を増やすことが1つの方法として挙げられますが、闇雲な広告枠の増設は、ユーザーエクスペリエンスの低下やユーザーの離脱を招き、将来的な収益の低下にもつながる可能性が考えられます。
ユーザーの離脱を最小限に抑えつつも、継続的なマネタイズを図るためには、アプリの特性やユーザーメリットを第一に据えた上で、フォーマットの選定や、広告枠の設置場所を工夫することが大切であると考えています。
オーテでは、「パズルを解いて懸賞に応募する」といった基本のユーザー体験を大切にすべく、単純に広告の表示頻度を増やすのではなく、リワード枠の報酬の内容をユーザーのメリットにあるものに変えた結果、15%ほど全体収益が上がりました。
また、既存枠の収益性を最大化するためには、メディエーションを導入することが有効ですが、そこに追加するアドネットワークについても、アプリ、ならびにユーザーとの相性を考えて、1つ1つ検証を行っています。アプリのメインユーザーである主婦層と案件との親和性を考慮した上で、国内のアドネットワークを導入した際には、売上が20~30%増加する成果にもつながりました。
3.ユーザーを知ることで、カスタマーサクセスの向上とマネタイズの最適化ポイントを探る
現在自身が担当しているカスタマーサクセスの向上と、新規広告枠の導入をはじめとしたマネタイズの強化は、いわばトレードオフの関係にあり、その折衷案を見出すことは常に大きな命題であると言えます。
このことは、iOS14.5のリリース後、更に顕著となっており、広告収益モデルのアプリを運営するパブリッシャーにとっては例外なく、大きな課題となっていることが窺えます。
そんな中、カスタマーサティスファクションとマネタイズの最適な落としどころを探っていくためには、まずは「ユーザーを知る」ことが最重要であると思っています。
広告表示が少なからずエンゲージメント低下の要因になり得るという事は分かっていても、そもそもユーザーは何が嫌なのか(頻度なのか・出るタイミングなのか・内容なのか)を知る必要があります。
現在弊社では、アプリ内で利用しているユーザー像の理解を現場のCS・マーケティングの部署だけでなく経営陣・エンジニア・デザイナーとも一致させるためにユーザーインタビューを行いペルソナ作りに注力しています。 その解像度が上がってくると「誰に対する施策をするのか」「その人たちのペインとゲインは何なのか」と紐解けていき、施策の具体度や優先度も決めやすくなると考えています。
とはいえ、iOS14.5の影響値も大きく、マネタイズチームとしてはいかに減少幅を最小限に留めるかという点も重要なミッションになります。
オーテでは現在、LAT (追跡型広告制限)オンとオフ、それぞれのメディエーショングループを作成し、最適化ポイントを探ることに取り組んでいます。
以前と比較して工数自体は倍になりましたが、この取り組みを通じて今ではiOS14.5がリリースされる前と同じ水準にまで回復しており、オプトアウトによる影響の最小化が実現しています。
まとめ
オーテでは、アイモバイルによる子会社化後、売上の増加を目指した施策を段階的かつ地道に取り組んできた結果、目前の課題をもとにした「次の一手」を皆で共有できる状態が実現しています。
iOS14.5のリリースをはじめ、様々なマーケティング施策の基盤となるデータの種類や、計測手法が大きく変化する昨今、継続的にマネタイズを図り、アプリを成長させていくためには、これまで以上に様々なデータに基づいた多角的な検証の重要性と、マーケティング、マネタイズ、プロダクトサイドをはじめとした各セクション間の連携の重要性が高まってきていると感じています。
そして、このことを継続的に、かつ的確に行っていくことは、新たなチャレンジの基盤づくりにもおいてもとても有用なものになると考えています。