by 藤原 寛史 氏 | 7月 11, 2021
Gunosy社のカルチャーと、ニュースアプリを成功に導くためのマーケティングの4つのポイント
藤原寛史氏のキャリアとバックグラウンドについて
藤原寛史氏は、Gunosyメディア事業本部アライアンスメディア事業部長として、KDDI社との協業事業を中心に担当しています。
KDDI社と共同で展開している「ニュースパス」のアプリに長く携わり、直近では同じくKDDI社と共同で展開している「auサービスToday」アプリのリニューアルプロジェクトにビジネスオーナーとして参画。既存機能の利用状況を踏まえてこれまでのユーザー体験やポータルとしての価値を活かした上でのプロダクト改善を進めています。
前職では、医療人材系の事業会社にて、SEOやリスティング広告などでの集客からCRMに至るまで、幅広くデジタルマーケティング、開発ディレクションを経験。データを細かく因数分解しながら施策に落とし込む前職の経験や知見を活かして、Gunosy でのアプリマーケティングにチャレンジされてきました。
藤原氏のインタビュー記事はこちらをご覧ください。
Gunosyについて
Gunosyでは、「情報を世界中の人に最適に届ける」を企業理念に掲げ、ニュースアプリ「グノシー」のほか、女性向けメディアの「LUCRA(ルクラ)」、クーポンキュレーションの「オトクル」などのメディア事業を運営し、自社の持つニュースコンテンツやアルゴリズムを用いて、記事および広告の最適掲載により収益改善を行っています。
ビジネスアライアンスの強化で目指すマーケティングとアプリ運営
また、上記のアプリ以外に、KDDI社と協業のもと「ニュースパス」、「auサービスToday」の2つのアプリの運営を行っています。
「ニュースパス」は、KDDI社のauブランドから提供される多くのAndroid端末にプリインストールされており、幅広いユーザーの方に利用されているニュースアプリです。メインユーザーは40代以上が占める割合が高く、政治・経済などのストレートニュースが好まれやすい傾向があります。また、他のニュースアプリと比較して色使いを多用せず、文字が並んでいても疲れにくく読みやすいUI設計により、シンプルに毎日心地よく使っていただけることを目指しています。
「auサービスToday」は、「auサービスTOP」として展開していたauユーザー向けのポータルアプリをリニューアルしてスタートしました。今まで複数のメディア事業を開発・運営してきたGunosyが持つ、記事編成や広告配信アルゴリズムなどの運用ノウハウと、KDDI社が持つ幅広い顧客基盤という2つのアセットを連携させることにより、ユーザーに最適なコンテンツの配信やサービス情報の提供を推進していきます。
どちらのアプリも広告収益モデルであり、運用型広告が収益の中心であり、事業成長のために広告商品の改善は欠かせません。マーケター視点を持つ事業責任者として、「どのようなメディアであればマーケターとして出稿したいと感じるか」という点も、プロダクト設計やブランディングに取り入れようとしています。「集客のためのマーケ」だけではなく、「事業成長や収益拡大につなげていくためのマーケ」をプロダクト側にも活用していけるように考えています。
1. データに基づいて、事業収益の観点で最適な判断を下す
Gunosyでは、広告集客を単純にCPIで見ていくのではなく、KPIツリーを分解し、自分たちのアクションや投下リソースに対しての妥当性を評価する、という考え方を軸にしています。
例えば、ニュースパスにおけるプロモーション施策の評価を行う際に、獲得チャネル単位のCPIだけではパフォーマンスが悪く見えても、収益を加味した投資効率など他のKPIでは、あるチャネルが逆に優れていると評価できたケースも見られました。同じ媒体でも、キャンペーンの種類や、ゴール地点をどこに設定するかによって、大きな差が出ることもあります。
デジタルマーケティングの一般的な指標だけに頼ることなく、事業成長を説明し得る指標で施策の評価や意思決定を行える状態を整えることが重要です。
2. ユーザー獲得のポイント:ユーザー行動を理解した上で、訴求内容やメッセージを捉え直す
媒体よりも訴求内容によってパフォーマンスが左右される傾向があります。元々「ニュースが読めるアプリ」であることを訴求内容としていました。直近数年、アプリ各社は「クーポンが使えること」をメインに訴求する施策を採用することがトレンドになりました。クーポンに惹かれてアプリをインストールしたユーザーがとる行動は、ニュースが読みたい思いでアプリをインストールしたユーザーとは異なります。ビジネスモデル上、ニュース閲覧の体験の合間に広告が入るUXになっているため、ニュースが読みたいユーザーのニュース閲覧数は当然多く、実際の広告インプレッション数も多くなりやすい傾向があります。一方、クーポンに惹かれて入ってきたユーザーが、クーポンだけを見に行ってしまうと、例えばクーポンの合間に適切な広告が表示されない限り、収益性は下がってしまいます。クーポンの訴求はプロモーション施策の幅を広げるものではありますが、事業の投資対効果の観点から、どういったユーザーを集客することが事業の目指す方向性と一致するのか、訴求内容やメッセージと整合性が取れていることが重要です。
3. 中間指標を設計する
ニュースアプリは広告による収益モデルが中心です。ユーザー課金モデルのゲームアプリなどと異なり、一度の起動利用での収益は比較的小さいため、投資を売上で回収するまでのリードタイムは長くなりやすい特徴があります。
例えば、チャネル別の予算ポートフォリオやアプローチの妥当性評価を行う際に、実際に発生した売上データを利用すると、結果が判明するのが1年単位で先になる…といった状況にもなりかねません。素早い改善を行うには、短いスパンで収集可能な指標で妥当性の高い評価を行えるモデル設計が必要になります。
また、社内の他サービスを比べると、メディア事業という根本の収益モデル部分は同じであっても、中間指標や評価モデルは微妙に異なります。主に利用される機能やコンテンツが異なれば、ユーザーの利用傾向も異なり、収益に近いアクションも違うものになるためです。共通の指標で評価すればOK、と安易に考えることなく、プロダクトごとに適切な評価指標やモデルを作り、その妥当性を維持するためにカスタマイズしていくことが重要と考えます。
4. 一気通貫型のマーケティングを実現する環境
Gunosyでは、マーケター自身がクエリを抽出・集計するなどしてユーザー獲得ログとアプリ内のアクティビティログを連携させながら媒体選定、キャンペーンのパフォーマンス分析、アプリ内のユーザー体験の把握などを一貫して行っています。
社内全体のカルチャーとしてデータドリブンな意思決定が行われ、マーケター自身が機能開発やディレクションにも携わり、役割が多様化してきています。上流工程から一貫してプロダクトとマーケティングが密接に関わることにより、定量的にユーザー行動の変化を捉え、それに合わせた施策の実施や連携が行いやすい組織になっていると思います。
私自身、入社前はアプリマーケティングの経験はありませんでしたが、前職でのwebマーケティングや営業企画の経験を軸に、プロダクト設計や事業企画、戦略設計に入り込んでいる状況です。自身のアセットを活かしつつ、領域を広げて更なるステップアップも図れる環境だと感じています。
まとめ
アプリマーケティングを成功に導くには、きちんとPLにつながる施策かどうかの検証と、プロセスを分解し、自分たちのアクションやリソース投下に対しての妥当性を評価していくことが重要であると考えています。
これは、アプリに限った話ではなく、webマーケティングでも、営業でも、成果につなげるためのプロセスの考え方は同じであると感じています。それぞれに強みを活かしつつ、領域横断でプロダクトの改善や事業成長に関われる機会があることが、ポテンシャルを引き出す素地になっているのではないでしょうか。