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フリマアプリの業界リーダーメルカリが取り組む、オンラインとオフラインを融合させたアプリ起点のマーケティングを実現する4つのポイント

by 大西 正太 氏 | 6月 29, 2021

大西正太氏のキャリアとバックグラウンドについて

大西 正太氏は、株式会社メルカリでマーケティングチームに所属し、アクイジションマーケティングを務めています。。
2020年に株式会社メルカリに入社する前は、グルーポン・ジャパン、ナイキジャパン、LINEの3社にて、デジタルマーケティングの戦略策定および実行やデジタル領域のプロモーション、事業開発等を担当していました。
また、学生時代に「デザインTシャツの共同購入サービス」立ち上げた経験が、マーケターとしてのキャリアの原点になっています。

大西氏のインタビュー記事はこちらをご覧ください。

メルカリについて

スマートフォンから誰でも簡単に売り買いが楽しめるフリマアプリ「メルカリ」、メルカリを通して、全国のお店で利用できるスマホ決済サービス「メルペイ」を運営しています。また、メルカリのアプリに併設されている決済サービスのメルペイを、メルカリ利用時のシームレスな決済手段としても連携させることで、複合的にユーザーエンゲージメントを高めることにも注力しています。また、昨年から各種サービスの相互連携による顧客基盤の拡大、新たな事業の創出を目指したNTTドコモと業務提携にも取り組んでいます。

1. アプリのユーザーを増やすためのパートナー企業各社との提携

MAU(月間アクティブユーザー)が約1900万(2021年6月期第三四半期決算時点)、GMV 6,259億円(2020年6月期通期決算時点)を記録し、日本最大のフリマアプリとなっていますが、今後更に事業としての成長を考えたときに、GMV(総流通額)をいかに増やしていくかといった点が重要になります。また、ユーザー視点に立ったとき、アプリの利用価値を感じられる魅力的な商品が多く出品されていることも併せて重要となるポイントです。
現在ではそういった面から、商品の購入だけでなく、出品までを行ってくれるユーザーをいかに増やすかといったことを重点に置き、より出品をしてもらいやすくする状況の提供を目指したプロダクト面の改善と、コミュニケーションの強化を連携して様々なマーケティング活動を展開しています。
アプリの機能面では、バーコードを読み取るだけで出品ができる機能の実装、より出品をしやすくするといった面では、小売店舗での発送用資材の販売のほか、直近では、発送したい商品に貼るだけで郵便ポストから送ることができる「ゆうパケットポスト発送用シール」を提供しています。
また、オフラインにおけるハイタッチなコミュニケーションを可能にする拠点を創出するといった面からは、商業施設、コンビニ各社、薬局、携帯キャリアといった、リアル店舗を有するパートナー企業との様々な協業を展開しています。

2. オンライン・オフラインを通じたメルカリを使ったことがないユーザーへのアプローチ

メルカリを使ったことがないユーザーへのアプローチとして、デジタルとオフラインの両軸でコミュニケーションをこなっています。事業全体の収益性を意識しながら、CRMとの連携を行いROASをKPIとして見ています。新規獲得の数値やその媒体だけを見るのではなく、購入・出品するユーザーへの転換率を追いかけながら、広告だけではなく獲得の経路分析も行いながら日々の運用に落とし込んでいます。
また、新型コロナの影響で漫画アプリや動画ストリーミングアプリなどが急成長したことに伴い、リワード広告の需要も高まってきています。そういった中で、CRMとさらに連携をしながらデジタルでのカスタマージャーニーを最適化し、転換率向上のための解析に取り組むことで、中長期のLTVから試算して獲得効率が高い媒体や配信面を特定していければと思っています。
また、オフラインの施策では、前述にもあるようにパートナー企業との連携を強化しています。セブン‐イレブン、マルイ、ウエルシア薬局、ドコモと連携した、メルカリの新規会員登録で各店舗でのお買い物がお得になる「はじメル祭」の実施など、オフラインの拠点を通して、メルカリのダウンロードを促すキャンペーンを行いました。
さらに、老若男女を問わず、全ての人に使ってもらえる身近な存在としてのサービスを目指していくといった面で、「もっとみんなのプリマアプリへ」といったブランドメッセージを策定し、国民的人気タレントを起用したTVCMを放映するなど、特にマス向けのブランディングを意識したコミュニケーション施策にも注力しています。よりコミュニケーションのチャネルは多様化していますが、起点であるアプリだけではなく、消費者にとって馴染みのある小売店舗や商業施設や実店舗、テレビCM、SNS、デジタル広告など世の中の人の目に触れるものすべてをコミュニケーションチャネルとして意識しています。

3. 獲得したユーザーを育てる「オンボーディング」

一方で、アプリやオンラインのみでは、ユーザーとの直接的な関わりやコミュニケーションを持ち、信頼関係を築くことが難しい局面があります。メルカリではそういったデジタルの弱点を補いつつ、ユーザーの“育成・定着”を図るべく、新規ユーザー獲得や、出品意向を持つユーザーに向けたオフライン領域でのユーザー・オンボーディング施策を推進しています。具体的には、ウエルシアの各店舗やドコモショップほか、マルイ内に設置している「メルカリステーション」内で、メルカリの使い方を講義形式で1からわかりやすく、実際にアプリの操作を行いながら学べる「メルカリ教室」を開催しているほか、先述の「メルカリステーション」では、出品したい商品を持っていけば、スタッフのサポートを受けながら、その場で写真撮影から梱包、発送までが可能なスペースを提供しています。実際のところ、「メルカリ教室」を通じて獲得したユーザーは、オンライン広告経由で獲得したユーザーよりもエンゲージメント(=出品ユーザーへの転換率)が非常に高く、数値面でも大きな成果につながっています。

4. フットサル型なチームカルチャー、プロダクトとの密な連携

オンライン、オフラインの垣根を越えて、様々な施策を横断的に進行させていくためには、マーケティングチームだけでなく、プロダクトチームとの密な連携が求められますが、それを可能にしているのが、メルカリ独自のチームカルチャーであると考えています。
皆で目指す場所は一緒、すなわちゴールは一緒の状態なので、スポーツで例えると、ポジションが決められていて、そのポジションで与えられた役割でベストを尽くすサッカー型というよりは、ポジションが流動的なフットサル型な進め方をしている状態であると言えます。そういった、誰がゴールを決めてもOKという部分は、メルカリの組織独自の面白いポイントだと思います。
例えば、メルカリでの購入自体は気軽に行ってもらえることが多いですが、出品の際には何を売っていいのか分からないといった課題や、自分で写真を取ったり、配送をしたりなど購入より障壁が高い部分もあります。そういったところで、プロダクトサイドでは、機能追加を行い、マーケティングではキャンペーンなど外部パートナー様との取り組みを通じてユーザーへのベネフィットを提供しています。
私自身も、様々な領域で数多くのプロジェクトに参画していますが、一緒に取り組むメンバーの顔ぶれが都度異なることも多く、そこで一緒に仕事をしたメンバーと別のプロジェクトで関わったり、気軽に相談ができたり、プロジェクトを重ねれば重ねるほど仲間が増えていくといった部分にとても魅力を感じます。

まとめ

アプリマーケティングというと、一般的にデジタル広告の印象が強い領域ですが、ユーザーの生活・行動様式が大きく変化する昨今において、ユーザーの拡大やエンゲージメント向上を図っていくためには、これまでの成功体験や、既存のチャネルに捕らわれない取り組みこそが重要になると思います。
またそれには、目指すべきゴール像の共有や、マーケティング、プロダクトサイドをはじめとした各部門の柔軟な連携を行っていくことも重要です。
連携が可能となることで、プロダクトやサービスの改善が実行しやすく、必然的に提供できるサービスの質も高くなり、結果的に、ユーザー目線に寄り添った「使ってもらえる」「使いやすい」アプリづくりにもつなげることができると考えています。